東京科学大学の瀧ノ上研究室との共同研究がNature Communicationsに掲載されました。
生物の細胞では、液–液相分離で形成される液滴が、細胞の構造と機能の制御、さらには病気の発現などにも関与しています。近年では、人工的に合成されたDNAが液–液相分離して形成される「DNA液滴」の研究が進められています。その背景には、この液滴はプログラマブルな分子であるDNAがベースであるため、配列設計を通じて生体内の液–液相分離液滴のさまざまな挙動を再現、制御できることにあります。DNA液滴の流動性制御は、分子ロボットの駆動に関わるだけではなく、分子コンピュータの演算結果をアクチュエーションに結びつける役割もあります。
発表のポイント
- 光の波長スイッチングで流動性が可逆的に変化するDNA液滴を作製
- 光応答性の有無をDNAの配列に応じて変えられる液滴で、駆動モードを切り替えられるDNAマイクロ流れを実現
- インテリジェント流体ベースの診断チップや流体型分子コンピュータへの応用に期待
本研究の光制御DNA液滴は、駆動と演算を統合させた流体型DNAコンピュータとして、情報工学(生体分子コンピュータ)や生物医工学(流体型診断チップ)、機械工学(流体型ロボット)などへの応用が見込まれます。また、情報を塩基配列に自在に書き込めるDNAを用いる点で、水や油などのプログラムできない分子材料を用いる従来のマイクロ流体工学とは一線を画した、インテリジェントな微小流体に立脚したマイクロ流体工学の可能性が拓けたといえます。
論文情報
タイトル: Remote-controlled mechanical and directional motions of photoswitchable DNA condensates
著者: Hirotake Udono, Shin-ichiro M. Nomura, Masahiro Takinoue(鵜殿寛岳、野村M.慎一郎、瀧ノ上正浩)
掲載誌: Nature Communications
DOI: 10.1038/s41467-025-59100-x
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-025-59100-x
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